THE LAST PENGUIN...

日々考えたことや誰かの役に立ちそうなことを書きとめておこうと思います。

シンガポールの教育環境はどのように魅力的か。日本人にとっての意外なメリット。

シンガポールに来てから、子供の教育について考えさせられることが度々ある。特に思うのは、シンガポールに滞在していることは子供の教育おいてどんなメリットがあるのだろうか、ということだ。
よく聞くこととしては、英語の習得、中国語の習得、世界一高い教育レベル、グローバルな生活環境等、様々な期待がありそうだ。学校の選択肢も非常に多く、日本人学校、ロカール校、インターナショナル校があり、どのようなニーズにも対応できそうな環境に思える。
 
英語習得の機会というのは、日本で生活することを考えればそれなりに貴重な環境であろうし、シンガポール移住となればせっかくの機会だから是非子供をインター校で学ばせたい、と考えるのも無理はない。ただ実際に周りの様子を見ているとなかなかそう簡単にはいかないことがわかる。
日本人の義務教育期間の子供に限定して考えるとき、シンガポールにおける幅広い教育の選択肢は本当に豊富な選択肢として機能するのかというと、かなり疑問が残るのだ。
 
理由はともあれ、子連れで海外生活をすることになれば教育環境の選択はどの家庭でもそれぞれに試行錯誤しているだろう大きな問題だ。子供の年齢・性質、現在や将来の環境、親のバックグラウンド等によって状況は変わってくるだろうし、不確実な未来のことを考えれば尚更、言語や学校の選択に正解というものはないからこそ悩む。
一方で、特に駐在員家庭のような、両親共に日本人かつ滞在期間が不明確な家庭にとって、子供をインターに入れて良いと思えるような状況というのは実はかなり限定されるのではないか。(そもそも経済的な事情でインターは選択肢から外れる、というケースはここでは横に置いておく。)

 

シンガポールで子供にインター校を選択しても良いのはどのようなケースか?

  1. シンガポールの滞在期間が1年または2年程度とかなり限定的。日本への帰国が確定している場合。
    このようなケースなら子供の英語力に合ったインターを選択するのも良いだろう。英語や異文化に触れる良い機会だと捉えられる。このくらいの期間なら、本人と両親の努力があれば帰国後の勉強についていけなくなるリスクも少ない。
  2. 今後も海外生活基盤として生活するなど、第一言語を英語とする覚悟がある場合。(両親の片方だけが日本人だというケースなどはこのように割り切っている家庭が多いようだ。)または義務教育期間の終了までにシンガポールから他の外国に行くなど、日本語による良質な教育環境が望めず英語環境での教育となる可能性が高い場合。
    つまり選択が積極的か消極的か、という違いはあれど義務教育期間(特に小学校期間)に英語での教育を受けることで第一言語が英語になることを受け入れられるケース。
 

シンガポールでインターを選択するリスクとは?

仮にどちらのケースでもないのに、シンガポールでインター校に入れるというのであればかなりのリスクを伴うのではないだろうか。インターに行きながら日本語力を向上させていくのはかなり難しく、思ったようにいかないケースを多く見かける。母国語と英語の同時習得について、例えばヨーロッパの言語を第一言語とするような子供と日本語を第一言語にする子供を同じように考えることはできない。
加えて英語力のみの向上を考えた時にもシンガポールは難しい側面がある。というのも35,000人もの日本人が生活するシンガポールで、苦労なく入れるインターというのはすでに多くの日本人が通っているということであり、またこれだけの外国人が生活するシンガポールに於いてはインターに通う子供も非英語圏からの生徒の割合が多い。つまり英語圏のローカル校に通うケースと比較して英語の上達に大きな差が出るのは否めない。英語を第一言語にする覚悟をしてすら、その習熟レベルについては学校任せにしておけない事情があるのである。このギャップを埋められるのは、両親のどちらかがネイティブの英語話者のケースくらいだろう。
 
一方、シンガポールの日本人学校というのは大変恵まれている。ある程度大規模な小中学校が存在し世界的に見ても日本語に於ける十分な教育環境が整っている。決してまともな日本語教育が望めないから仕方なくインターへ、というような状況ではない。しかもこの日本人学校で受けられる英語教育も、日本の公立校と比較すればかなり充実しているのだ。
 

日本人にとって、子供にシンガポールで教育を受けさせるメリットとは何か?

先の見通しを考えて日本語を犠牲にしても英語を優先する、という考えもあるだろうが、小学生や中学生ではまだ子供自身の意思もはっきりしない時だろう。子供の意思をしっかり確認せずに決断するにはあまりにもリスクが高い。
名実ともに日本人になるべく日本の教育を受けながら英語も勉強することができれば、将来国際的に通用する英語力を身につけることも可能だろう。しかしその逆はどうだろうか。義務教育期間を終えて以降に、日本人としての教育をあとから身につけるのはなかなか難しい。
 
つまり大方の日本人家庭にとって、シンガポールで生活する、またはシンガポールで子供に教育を受けさせることの大きなメリットは、「日本人としての教育、日本語教育」を外国に居ながらにして質の高いレベルで受けられる、という風に逆の発想をした方がしっくりくるのではないかと思うのだ。日本で生活するのと同じレベルで日本の教育を受けながら、このようにグローバリズムを身につけたり、余力があれば他国語の習得環境にも恵まれている国というのは、なかなかないのではないだろうか。